一緒に踊って

「キィニチ」
「どうした」
「ぎゅっとさせてほしい」

 唐突な提案にもかかわらず、キィニチは眉ひとつ動かさずに「ああ」と頷いて両の腕を広げた。あんまりにもすんなりと受け入れるから、驚くのはこっちの方だった。

「いいの」
「ナマエだからな」
「そっかあ」

 ほら、と催促されるので、お言葉に甘えて背中に腕を回す。細いようでいてずしりと筋肉が詰まっている。形を確かめるようにしてぎゅうと抱きしめると、キィニチも強く抱き返してくれた。
 そのまま彼は何にも訊かなかった。私の口はしびれを切らして、勝手に「さみしくなっちゃった」と言った。

「そうか」

 相槌が彼の胸で低く響いた。心臓の拍動につられ、私の心臓ももどかしげにステップを踏み出す。間抜けなダンスを踊っている。間抜けにとんとんと踊っている。


INDEX