きみが幸せでありますように

 キィニチの手は歳に似合わず無骨でかっこいいのだけれども、乾燥してひび割れると言うので保湿クリームを塗ってあげていたところ、だんだんと妙に滑らかで、しかし山に生きる者の生命力を残した、ちょっと不恰好な手になってしまった。これはこれで愛おしい——のだが、視界に入ったとき変にギャップを感じて笑ってしまう。

「何かついてるか?」
「ううん、なんにも」

 笑いを堪えながらキィニチの手にクリームを塗り込む。毎日ずっと続けていたら、いつかキィニチは白魚の手を手に入れてしまうかもしれない。想像してみると、やっぱりちょっとおかしい。

「何がおかしいんだ」
「なんにも、っふふ」
「おい」

 元はといえば自分で保湿しようとしないキィニチが悪いのだ。こんな簡単なこと、子供にだってできるのだから。なんでもできるキィニチなら、こんなこと朝飯前に決まっている。そんななんでも自分でできてしまう人が、お母さんにするみたいに甘えてくれることに、嬉しくなってしまう私も大概なのだけれども。


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